孫正義「リスク」を「成功」に変える28のルール(書評)
まずはコピーライティングの観点から一言。
「孫正義 『リスク』を『成功』に変える28のルール」
このタイトルは独自性を表す要素が弱いため、もったいない。
せっかく「著者が元ソフトバンク社長室長」という独自性があるのだから、それを活かしたタイトルにしたほうがいい。私だったら「孫正義 社長室長が間近で見た28のルール」といったタイトルにして「この著者からしか得られないメリット」を強調する。
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本書の中身は非常に読みやすく、ところどころに孫正義社長の知られざるエピソードが散りばめられていて、個人的には値千金の書籍と評したいほどだ。
しかし、見出しが凡庸で損している。おそらく、目次をパラパラと眺めて「読む価値なし」と早合点した人も多いだろう。
これは勝手な推測だが、本書は対象読者を若者に絞っているのではないだろうか。そのため、「勝ち癖をつける!」「よいアイデアがあれば、即行動!」など聞き覚えのあるフレーズが堂々と目次として並んでいる。これでは“読書家”の読者はスルーしてしまう。
若者を対象にするとしても、見出しは凡庸であってはならない。ほんの一捻りでもいいので本文を読みたくなる工夫をすべきだ。
例えば、本書の目次には「孫正義成功のルール03」として「勝ち癖をつける!」と記載されているが、私だったらこう書く。
「この一勝で勝ち癖をつける!」
こう書くことで「『この一勝』とは何?」と気になった人が本文を読みたくなり、パラパラとページをめくり、孫正義の「お前ら、負け癖がついとるんじゃないか? 一度でいいから一番になってみろ」という発言にたどり着き、孫氏の金言に触れ、購買の可能性が高まるだろう。
その他にも、本書にはもったいない箇所がたくさんある。中身の価値は高いのにコピーライティングの技術が弱いために損をしている典型例と言ってもいい。次作にはコピーライティングの技術も反映した良書を期待したい。
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